Topics2022/09/14

学会発表に至る大学での私の歩み

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 9月14日から16日の3日間にかけて,日本音響学会2022年秋季研究発表会が開催されました.開催場所は北海道札幌市にある北海道科学大学です.
 学会では
  大学院修士1年 沖田和久くん 講演題目「AVSにおける横方向定位時の両耳波形について」
  大学院修士1年  林友哉くん 講演題目「3和音の音量感に与える基音周期振動の影響」
 の2名がポスタセッション1日目で発表を行いました.

 参加した沖田和久くんがこれまでの学生生活を振り返りながら学会で学んだ事を書いてくれました.


 私は学部2年生の時にロボットプロジェクト基礎を受講しました.大学図書館の動画コンテンツを利活用するための「仮説→実験→検証」に挑戦しました.私は動画コンテンツの「シーン検出をする」ために,「シーンが変わる」とはどんな状態かいくつかの仮説を立て,実験と検証をする「考えるプロセス」を初めて意識して取り組みました.
 講義内では上手くいかない事が多くあり,講義の最後に成果報告をするときは「これしかできなかった」と報告してしまったのですが,受講生全員でのレビューを通して「ここまでは出来た」という成果をしっかり見ておくことや,「なぜ上手くいかなかったか」を見直し「次はこう出来そう」を考えることをロボプロを通して実施しました.

 3年生では新型コロナの影響もあり,前期は大学に出向くことが出来ませんでしたが,その遅れを取り戻したい一心で既に研究室内で進行していた「ロボメカデザインコンペ」の活動に後期から参加しました.当時修士2年生だった先輩が取り組んでいる研究を提案ロボの主要技術として,その技術を「どの分野のどんな課題」に向けて使うかを考えていました.はっきり言って私は技術的なところは殆ど理解出来ていなかったと思います.しかし,先輩がどう課題を設定し自分の技術の活かし方を模索しながら答えを導き出す過程を目の当たりにし,私もこうなりたいと思うようになりました.
 コンペではプレゼン発表を一部担当しました.これが初めての学外での発表でしたが,優秀賞と企業賞を受賞という結果にも結び付いたことがとても嬉しかったです.

 4年生では大学院進学を意識し始め,卒業研究に取り組みながら前年に引き続きロボメカデザインコンペに挑戦しました.
 ロボメカデザインコンペでは自分たちにとって身近な「遠隔授業」について,「他人を感じられない」という課題の解決方法を考え,そこに「自分たちの技術がどう活かせるか」を同じく卒研に取り組む4年生や就職活動に繋げたい3年生と協力して行いました.先輩のように沢山のことをこなすのはまだ難しくても,チームで協力し補い合うことも成し遂げる方法の一つだとその時は感じました(今思うと前年も先輩だけが頑張っていたのではなく,私たち後輩が知らず知らずのうちに支えることが出来ていたのかもしれません).結果として前年と同じく優秀賞と企業賞を受賞することができ,自分の主体的な取り組みが評価されたことが自信に繋がりました..
 学会発表も経験しました.初めての学会発表は11月にオンライン開催された音響学会九州支部の研究発表会でした.卒業研究で取り組んでいたことの成果を報告するつもりで臨みましたが,初めての学会発表ということもあり用意したプレゼン資料をただひたすら読み上げるだけになってしまったと反省しました.
 そこから学部卒業間近の2022年3月にオンライン開催された音響学会春季研究発表会にてポスタ形式の発表をしました.それまで3回の発表を経験しましたがとても緊張しましたし,自分の研究に興味を持ってもらえるか,そもそも自分は大したことが出来ていないんじゃないかと不安な気持ちだったことを覚えています.オンライン開催特有の画面に向かって一人で話している孤独感が不安をより大きくしていたように感じます.それでもなんとか伝えようと必死になった結果,通常ポスタで簡潔に説明する場合は5分ほどでまとめるべきところを30分(セッションの時間は1時間)も時間を使ってしまい,聴いていたある大学の先生を困らせてしまいました.ですが,熱意を持って説明する姿勢を褒めていただきました.次は同じミスをしない,そして内容に興味を持ってもらえるようにしたいとその時強く思いました.

 そうした経験をしながらも大学院に進学し,今回が初めての「対面での学会」参加となり,本番前にはやはり緊張しましたし自分が話せるかどうか不安になりました.しかし始まってみると多くの人が自分の発表に興味を持って聴きに来てくださるので,期待を裏切りたくはないと思いとにかく伝えること,真摯に対応することが大事だと考え,気持ちを切り替えて発表に臨みました.
 オンライン開催であった孤独感や不安はなく,ディスカッションが活発になるのがとても楽しかったです.前回30分使って説明した先生ともお会いし,今回はしっかりと短くまとめて話すことができ,意見交換に長く時間を使わせていただきました.そうした中で「次の学会までにこんな結果を出したい」,「分かりづらい箇所は修正しよう」,のように「こうしたい・こうありたい」が表に出てくるようになり,この感覚を得られたのが私にとっての大きな収穫です.
 そして他大学の先生・学生,企業の方々との意見交換をしたり,名刺交換などで名前を覚えてもらう機会を得られたことも私にとって大きな収穫です.今回発表したことで研究内容を覚えてもらい次回も聴きに来てもらえるようにアピールをすることで「前よりグレードアップしよう」というモチベーションになり,さらには就職活動にも繋がります.実際に企業の方に研究内容をお伝えしたところ興味を持って頂き,事業の中ではどう使えそうか,こんな結果出てくると良い,といった企業目線で求められる結果・成果を直接聞くことが出来るのは対面の大きなメリットだと思います.

 学会と聞くと堅苦しいイメージや厳しい意見が来そうで怖いといった印象を持つ人もいるかもしれません.事実私もその一人でした.
 しかしそれは想像の域を出ません.実際に経験してみると,確かに堅苦しい場面や厳しい意見を貰うことはありますが,それ以上に自分にとって得られるものはたくさんあります.研究の中で理解できていないことを学ぶこともできますし,新しい技術について情報収集もできます.どうすれば伝わりやすい発表になるか実践できますし,それが自分の志望する分野らしい表現になれているか確認することもできます.志望分野の決まっている人であればその分野の人に直接アピールができるかもしれませんし,決まっていない人は自分が向いている,センスのあるところや志望分野が見つけられるかもしれません.
 学会では普段ならなかなかお会いする機会の得られない企業の方や偉大な業績を残された先生方であっても,私のような学生であっても平等に参加する権利が与えられています.そうした環境でまずは腕試し程度に挑戦してみるのも大事ではないかと(過去の自分にも)伝えたいです.