Topics2025/01/17

大分合同新聞×日本文理大学共同企画「愛情を注ぐ 玖珠町SL定期清掃」

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愛情を注ぐ 玖珠町S L 定期清掃

玖珠町にある「豊後森機関庫公園」には、国の登録有形文化財の機関庫と転車台がある。その近くにはSL蒸気機関車29612号(愛称はキューロク)が静態保存されている。キューロクは1919年製造の年代物で、屋根のない野外展示であるにもかかわらずピッカピッカしている。それは、キューロクを末永くきれいに保つため、毎月第2日曜日に定期清掃をボランティアが行っているからだ。

豊後森機関庫は戦時中に軍事輸送の拠点となっていたため、1945年8月4日に米軍機の機銃掃射に遭い、職員3人が死亡し機関庫の壁には現在も機銃掃射の跡が残っている。そのころキューロクも長崎本線や唐津線で活躍し、長崎に原子爆弾が投下された時期には、被災された方々を乗せて走り、人命救助に貢献してきた。豊後森機関庫公園ではこのようなヒストリーを感じることができる。

ボランティアは高齢者が多く、キューロクの清掃をとても丁寧に行い、車体のペンキまで塗り替えていく。1カ月の間に生えた青コケも丹念に落とすと「今日は達成感があった」という。各自がキューロクに愛情を注いでいるように見えた。豊後森機関庫公園にある機関庫やキューロクの存在が、SLがあった時代を共に生きた人々の心の拠り所になっているのではないかと感じた。

(日本文理大学工学部情報メディア学科3年 藤井綺星)